「辞めて一年は何にもせずに、雑貨屋とかエステでバイトする完全なフリーター状態でし
た。その後は、同じレコード会社系は出来れば行きたくなかったし、かと言って他にコネ
もいから『デビュー」とかの雑誌を見て受けるだけ。今回もそう。これまで一○個くらないから.’
い受けたかな」

 

よほどAに苦い思い出があるのか、佐倉さんは顔を曇らせる。
でも、佐倉さんの芸能界での経験は、応募写真にしっかり生かされている。
「私、顔がでかいんで、化粧だけは気をつけてるんです。芸能人って、みんな小さいじゃ
ないですか。Aにいた子も、みんな小さかった。だからメイクは、ファンデに濃い色を使
ったりもします。たまに失敗して黒くなっちゃったりするの。あまりやり過ぎると私、く
どい顔になっちゃうんで……。自分の顔は、長所も欠点もよく知ってるんですよ』

 

自分の容姿に関して、ここまではっきり自覚し、それを初対面の他人にストレートに話
せる人は、そういない。聞いているこちらも、どう相づちを打つのか難しいところだ。で
も、彼女はこちらの反応を伺うことなく続ける。

 

「古内東子さんとか今井美樹さんとか、すごい好きなんです。雰囲気のある歌手?でも、鉛
私、すごい悪玉系なんですよ。人から言われるんです?・顔がくどいから、(メイクを)
やり過ぎると余計くどい、おまえは腹黒いとか言われちゃうの。自分としては今井美樹で
行きたいのに全然違うみたい。早坂好恵とか羽田恵利香とかの路線の方がいいんじゃない
とも言われる。でも、いいんです。自分のやりたい方向性と違うようにプロデュースされ
ても、タレントでも、まずはデビューが目標なんで。グループでさえなければ」

 

自分のキャラと、やりたい路線が全くバッティングしないことを、齢一三にして、デビ
ュー前
にして熟知してるとは、なんというか、とっても泣かせる。夢がある世界に向けて、
夢のないことを落ち着いて考える、その行為自体が。